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自転車操業=山口博士さん

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趣味を探求し続ける、街のヴィンテージ自転車屋。

2014年5月、六本松の閑静な住宅街にあるアパートの一室で、山口博士さんは「自転車操業」をスタートさせた。扱うのはアメリカ、イギリス製を中心としたヴィンテージ自転車のみ。広さ8畳ほどのショップ兼アトリエには、年代の異なるパーツが共存し、静かに経年変化を続けている。押入れであった場所は自転車の収納場所と化し、壁と天井からはサドルやハンドルが無数にぶら下がっている。「ヴィンテージ自転車は町乗りとしてまだ馴染みが薄いので、いきなり本格的な店舗を持っても継続は難しいと思ったんです。30台の自転車が準備できたら、場所を変えて正式なショップを構えるつもりです。それまでの宣伝も兼ねて、この場所で製作と販売を続けています」。

仕事を始めてある程度生活が落ちついてくると、人と違うものが欲しくなったり、趣味をさらに掘り下げたくなる気持ちは誰しも抱いたことがあるだろう。昔から古いものが好きだったという山口さんも、美術系の大学卒業後、就職してからは古着やヴィンテージ自転車にさらにはまっていった。その中でヴィンテージ自転車は、日常の移動手段として、自分以外の需要もあるのではないかと次第に思い始めた。趣味の範囲に留まらず、商いの道具にもなり得ると感じたのだ。「僕は趣味の人間なので。」とさらりと語る山口さんだが、構造や組み立ては独学で学び、パーツは海外のショップとのやり取りや、直接シカゴに赴いて買い付けるなど、長い時間をかけて独自のルートを開拓してきた。

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「私が普段乗っている自転車のフレームは1937年のものですが、これ程昔のものが今の時代でも乗れるのは、素材の質がいいからなんです。昔はコストを無視して高級素材で生産される傾向にありました。だからこそ錆びていてもしっかり磨いてあげれば、今でも味が出るんです。また、ヴィンテージ自転車はいつの年代物かという肩書きが重要視されがちですが、以前染色と彫刻を学んでいたせいか、私は自転車そのものの造形に惹かれます。今の自転車にはあまりない、フレームが曲線を描いているものが特に好きですね。現代の自転車とは素材も造形も全く異なり、調べていくととても奥が深い。そこがヴィンテージ自転車の魅力なんです」。

静かで穏やかな語りの中で、言葉一つひとつが熱を帯びている。遥々県外からも自転車操業を訪れる人がいる理由は、レアな品揃えだけでなく、“この人と語りたい”と思わせる山口さんの人柄と熱量にあるのだろう。アパートの一室には、山口さんのヴィンテージ自転車へのこだわりと豊富な知識が凝縮されている。

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Profile

yamaguchi
山口博士(やまぐちひろし)
2014年5月よりアパートの一室で自転車操業を開業。アメリカ、イギリス製のヴィンテージ自転車を中心に取り扱っている。買い付けたパーツと自身で組み立てたヴィンテージ自転車の販売のほか、メンテナンスや改造の相談も承っている。現在は予約制での営業。
住/福岡市中央区六本松3-15-2 1F 問/090-4489-8557 http://jitensyasougyou.com

写真=木下綾 文=永溝直子

 

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